中日スポーツ 2013年6月24日(月)掲載



昨年まで無名の23歳 新スター候補 初V小平

 昨年までまったく無名だった小平智(23)が70で回り、通算14アンダーに伸ばして優勝。ツアー初勝利を国内メジャーのビッグタイトルで飾った。この優勝で、来年から5年シードが決定。今年8月のWBCブリヂストン招待(米国オハイオ州・ファイアストーンCC)の出場権も獲得し、賞金ランク2位までの選手に与えられる7月の全英オープン出場権も見えてきた。松山英樹や石川遼、藤本佳則ら、日本の主役となる世代に、また1人新たなスター候補が加わった。

燃えた負けじ魂 松山、遼だけじゃない!!

メジャーで飾った

 重圧と緊張感がズッシリとのしかかる。最終日最終組、18ホールを硬い表情のまま回り続け、応援するファンの声にもほとんど応えられない。最後のパットを決めた瞬間、真っ黒に日焼けした小平の顔から、ようやく白い歯がこぼれた。

 「少しは松山や遼に追いつけたかな」。開幕前、話題になるのは21歳同士の対決ばかり。「あの2人は後輩なのに、いろんな経験をしている。悔しい」。仲のいい藤本や薗田峻輔も海外の試合に出た。「あいつらにできて俺にできないわけはない」。負けじ魂が体の中で燃えていた。

 2ヶ月前に体重計が80キロ近くを示したのにショックを受けて炭水化物を抜き、ロードワークを日課にした。大会初日もスコアが悪かった腹いせに7キロ走った。今は72.5キロになり、体が回って飛距離もアップ。今大会のドライバー平均飛距離約297ヤードは出場選手中4位だ。

 18ホール中最も難度の高い479ヤードの17番パー4で、その成果が出た。1打目を左ラフとはいえピンまで残り165ヤードまで運び、9Iで池に囲まれたグリーンのピン上10メートルに。本人も納得の2発だった。

 中学時代、父・健一さんに「プロになってベンツをあげる」と告げた。この大会の副賞はベンツ。「約束のベンツ」はもちろん父にプレゼントする。自身は5年シードなど多くのものを得た。一番大きいものは、同世代のトップたちと肩を並べたという自信だ。

「実力でこつこつ」

 「自分は派手ではないから、実力でこつこつ頑張っていく」。仲間からの祝福の水でずぶぬれになったウエアの上から、夢にまで見た優勝ブレザーを着た小平。その最後の言葉には、松山らへのライバル心がこもっていた。(大西洋和)

父には副賞ベンツをプレゼント
母は号泣「ほんとうに幸せ」

 18番グリーンサイド。メジャー戦でツアー初優勝を飾った小平を父・健一さん(72)、母・裕子さん(55)が涙の抱擁で祝福した。元ティーチングプロの健一さんは「こんなに早くとは思ってませんでした。ホッとしました。感無量です。これを待っていたんです」と笑顔。裕子さんは「私が来ると良くないので、家で(テレビを)見ていようと思ったんですが、もし優勝したら・・・と思って来ました。ほんとうに幸せです」と、小平のビッグプレゼントに号泣していた。

大応援団が見守る愛されキャラ

 どこか俳優の小栗旬に似た小平。期間中担当したハウスキャディーの成田真澄さん(40)は「目力がすごい子。そして集中力がすごい」と絶賛した。3日目までは陽気にプレーしていたが、最終日の後半はほとんど無言になり距離やクラブ選択は自分だけで判断したという。

 何事も、一人でやり抜くことが身上で、自宅にある小さなトレーニング室で、ほぼ独学で筋トレ。一度決めた事をやり抜く頑固さは、両親も感心するほど。この日は、かつで所属していた栃木のゴルフ場から「ゴー、ゴー、小平智」と書いたプラカードを手に応援団が大挙して訪れるなど、愛されキャラでもある。

 ゴルフを教えてくれた父親と年齢が離れている事から「早く優勝する姿を見せたい」と周囲に言い続けた。自身3度目の最終日最終組で、その念願がかなった。(大西洋和)


小平智(こだいら・さとし) 1989(平成元)年9月11日生まれの23歳。東京都出身。172センチ、70キロ。10歳でゴルフを始め、日大に進学したが中退。2010年にチャレンジツアー鳩山CC・GMAチャレンジで史上2人目のアマチュア優勝。同年12月にプロ転向。11年よりツアー参戦したが2年連続でシード権獲得に失敗。12年PGA・JGTOチャレンジカップでチャレンジツアー通算2勝目を挙げた。